日本法社会学会は、敗戦直後の1947年に、戦前の法学のあり方に対する「痛切な批判と反省」(千葉正士)を共有し、新しい日本社会の建設に向けて、それにふさわしい法学の研究・教育を実現し担っていこうとする志を持つ人々の参加を得て創設されました。法学と法実務を社会科学の方法を用いて革新していくことが目指され、それを通じて日本の法と国家・社会のあり方を変えていくことが目標として多くの会員に共有されていたと言えるでしょう。
その後のわが国の法と社会の変化は、本学会の活動にも大きな影響を与え、今日では、法と社会を対象に、広義の社会科学的な方法を用いて学際的な研究を行う研究者と実務家をメンバーとする学会へと進化しました。法の機能領域が拡大し、その社会的重要性が高まり、法と社会の関係が深化するとともに、法を研究する方法も多様化しました。法学以外の様々な学問分野の専門家が法現象の研究を進めており、また、その必要性が高まっています。こうした隣接分野の会員がより一層増えることが期待されます。法学分野においても、社会科学的研究の重要性を認識する実定法研究者や実務家が存在し、本学会に所属して法学と法実務の充実に寄与しています。今後も実定法研究者や法実務家と法社会学者の交流が維持され、より充実したものになることが望まれます。
法社会学は、伝統的に、基礎法学の隣接諸分野と協働して法学の研究と教育を根底で支える役割を担ってきました。法学以外の分野での「法と社会」研究が発展すればするほど、法学内部における法社会学と法社会学研究者の意義が高められる必要があると考えています。
いわゆるグローバル化の進展とともに法社会学の分野においても、各国の法社会学会・法社会学研究者間の交流が進み、国際的な法社会学会の活動も活発化しています。とりわけ、東アジアにおける交流と東アジアからの情報発信が、今後益々充実していくことが望まれます。法と社会は、各国に特有な課題と世界共通の問題に直面しており、わが国の法社会学研究者が世界に向けて発信することが期待される場面も多くなりました。超高齢社会の諸問題への取組み、大規模災害やパンデミックへの対応、気候変動などグローバルな環境問題への対処などの重要課題は、わが国の法社会学研究者が国際的に貢献できる多くのテーマの一部に過ぎません。本学会の会員がその研究成果を世界に向けて一層活発に発信し、国際的な研究交流に貢献していただきたいと願っております。
日本法社会学会理事長
濱野 亮